a hue and cry.


会期:2024年3月28日(木)〜4月14日(日)
3月29日(金) Opening Gathering 
会場 :アートかビーフンか白厨 @paichu_artsticker
住所:〒106-0032 東京都港区六本木5丁目2−4 朝日生命六本木ビル 2階
開催時間:17:00〜23:00
休館日:月・火
観覧料:無料
参加アーティスト:上野聖人 / Kiyoto Ueno @u__kyt 、佐貫絢郁 / Ayaka Sanuki @sanukiayaka 、平野泰子 / Yasuko Hirano @hirano_yasuko 、堀田ゆうか / Yuka Hotta @yuukasun 、水戸部七絵 / Nanae Mitobe @nanaemitobe
キュレーション:李静文 / Li Jingwen @celiamo_
展覧会ページ
https://artsticker.app/events/28646


 アートかビーフンか白厨では、2024/3/28(木)-4/14(日)の会期で、上野聖人、佐貫絢郁、平野泰子、堀田ゆうか、水戸部七絵のグループ展が開催され、李静文がキュレーターを務めます。
 本展「a hue and cry.」では、色を切り口として、我々の意識がどのように世界を経験し、捉えるかに焦点を当て、色彩を介して直接的な感覚体験とその背後にある深層の意味を探求する場を提示します。5人のアーティストが、絵画、彫刻、映像、インスタレーションなど、色そのものの力を超えた表現を通じて、色彩が持つ生命力と人間性、そして鑑賞者自身が色から感じ取る身体、感情、社会、そして存在そのものを提示します。

「反応、鑑賞、批評 - a hue and cry. 」クロージングトークイベント
この展覧会の締めくくりとして、4月14日(日)に、批評家/キュレーターの梅津元氏と、本展のキュレーター李静文氏がホストを務める特別なトークイベントを開催します。出品作家の上野聖人氏、平野泰子氏、水戸部七絵氏も参加し、作家、キュレーター、批評家それぞれの視点から、本展をふまえた「反応、鑑賞、批評」に関する対話を深めます。
開催日程:2024年4月14日(日)
チケット:無料(ArtStickerでの予約が必要になります)
開場:13:30
開始:14:00
終了:16:00




ステートメント



a hue and cry.



 カジミール・マレーヴィチは、1918年に「白の上の白」を制作しました。この作品は、異なる白色の二つの四角形が互いにオフセットされて配置される非常にシンプルな構成ですが、最初に見るときにはほとんど何も描かれていないように見えるかもしれません。
マレーヴィチは、具象的な物質や記号から解放された純粋な感覚や精神性を表現することを目指しました。その極端な抽象性を通じて、鑑賞者に作品をよく観察することが要求されます。作品をじっと見ている中、異なるトーンの白が微妙に相互作用し、空間と形の感覚が生み出し、無限や永遠、そして究極の静寂...

 ヤスミナ・レザの戯曲『アート』の中にも一枚の完全に白い絵画を巡ってストーリーが展開され、現代アートの価値とその受容に関する深い問いを投げかけると同時に、3人の友人間の関係と対立、そして個人間の価値観の違いについて掘り下げます。
白色は、純粋さ、無限、始まりなど多くの象徴的意味を持ちますが、『アート』では、白い絵画はこれらの意味を超えて、鑑賞者の意識と直接対話するレイヤーを提示しました。この白い絵画は、外界のオブジェクトとしてではなく、個人の意識経験を通じて理解されるべき「現象」となります。それを見る人々によってのみ意味を持ち得るのであり、その意味は多様で流動的です。

 芸術の本質が感覚によって創造される純粋な空間にあり、その純粋な空間の中には我々の個人の意識経験が充満されています。本展「a hue and cry.」では、色を切り口として、我々の意識がどのように世界を経験し、捉えるかに焦点を当て、色彩を介して直接的な感覚体験とその背後にある深層の意味を探求する場を提示します。5人のアーティストが、絵画、彫刻、映像、インスタレーションなど、色そのものの力を超えた表現を通じて、色彩が持つ生命力と人間性、そして鑑賞者自身が色から感じ取る身体、感情、社会、そして存在そのものを提示します。

 本展では、現象学の視点を借りて、色がどのように私たちの意識に現れ、感情、記憶、そして文化的解釈とどのように結びつくのかを深く探ります。展覧会のタイトル「a hue and cry.」は、直訳すると「公的な抗議」や「大騒ぎ」などを意味しますが、ここでは単語本来の「色彩(Hue)」と「声を上げる行動(Cry)」の二重の意味を持ちます。色彩が私たちの内面と外界をどのようにつなぐか、そしてアートが社会的な動きや変化に対してどのように強力なメッセージを伝え得るかを探求する場として機能します。

 この展覧会に参加する5人のアーティストは、それぞれの作品に単一の色調を通じて、文化的背景や個人的経験を反映します。各アーティストの作品は、色が私たちの意識にどのように現れるかという現象学的問いに答える試みです。

 上野聖人は、樟木を使用した彫刻を通じて、身体性と二元性を超えた中性的な存在を探求します。彼の作品は、伝統と現代性、具象と抽象の間の狭間を探ることで、観客の認識に挑戦します。

 佐貫絢郁は、言葉では表現しきれない微細な感情や人間関係を砂絵日記で描き出し、個人の中に潜める直接的な感情と社会の中で把握しなければいけない距離感を同時に表現します。

 平野泰子は、絵の具を重ね磨くことによって生まれる空間や現象に焦点を当て、「風景」という根底のテーマをフラットな表面で展開し、フラットの深度を拡張します。

 堀田ゆうかは、支持体への身体的なアプローチと白黒モノトーンを通じて、「名前がつく前の、身体の気配」を追求します。インスタレーションの中では人と空間、記憶と存在の脆弱性に光を当て、あえて目にかかる情報を削ぎ落とし、線の要素を強調します。

 水戸部七絵は、色認識と共感覚をテーマに、絵画と映像作品で、色と感覚の交差点で新たな視覚体験を提供します。色彩が持つ感情的、文化的積層を探求し、共感覚の現象の特殊性を通じて、意識と表現が連携する普遍性を提示します。

 「a hue and cry.」展では、単一の色から無数の物語が展開するプロセスを通じて、色彩が感情を映し出し、社会的な動きや変化への反応を視覚的に捉える手段となることを示します。現象学の枠組みを用いることで、色がいかに私たちの内面と外界を結びつけ、アートが社会的メッセージを伝える強力な媒体となり得るかの理解を深めます。

 また、本展は会場の「アートかビーフンか白厨」と連携し、色彩を軸にしたスペシャルドリンクメニューを用意しております。本展は色彩の展示ですが、色彩以上のあらゆる感覚を通じて、豊かな物語を読み取るその自身の力を観客に提供し、観客が無意識的に経験した世界の多様性、緊張、抗争、そして希望が作品を介して語られ、色彩のある世界での個人的な認識と感情の深層を探求する機会を明らかします。


李静文
2024/3
東京